臨床検査・病理技術科
患者の皆さまへ
正確で迅速な検査データにより皆さまの健康に寄与いたします
臨床検査・病理技術科では、血液・尿・便・組織などの検体を採取し、化学的・形態的に検査する検体検査と、心電図・脳波・肺機能・超音波など患者さんより直接生体情報を得る生理機能検査を行っています。また、院内の感染制御や医療安全、手術中の神経モニタリング検査など、チーム医療へも積極的に取り組み臨床支援を行っています。
2010年11月には臨床検査室の国際基準であるISO15189を認定取得し、検査の品質に影響する検体採取から精度管理、検査室の環境整備、教育など精度の向上に努めています。私たち臨床検査技師は正確で迅速な検査データにより、皆さまの健康に寄与いたします。
臨床検査・病理技術科部長 大嶋 剛史
主な業務と取り組み
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検体検査は、患者さんから得られた材料(検体)を用いて行われます。
検体には、尿・便・痰など患者さんの体外に排出されるものと、血液・穿刺液などのように体内から採り出されるものがあります。
これらの材料を集めて臨床検査技師が最新の分析器とシステムを駆使し、迅速かつ正確なデータを提供しております。
2021年1月1日より、血液検査項目(41項目)について、国内共通の「共用基準範囲」を採用いたします。詳細はこちらをご参照ください。生化学検査

血液中の化学的成分の分析をします。搬送ラインを検体が流れていき、多数の項目を短時間で処理していきます。
免疫血清検査

ウイルスやがんなどによってできた蛋白などを分析します。肝炎やエイズなどの検査はこちらで行います。
血液検査

血夜中の赤血球・白血球・血小板などの数の算定や細胞の分類を行い、血液の病気(貧血・白血病など)がないかを調べます。
一般検査

尿・便・体液などの細胞成分や化学的な検査をします。特に尿沈査(尿中の細胞成分)ではさまざまな病気の情報が顕微鏡を通して得られます。
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輸血に関する検査や、使用する血液製剤の管理を一括して行っております。 コンピュータを用いて患者情報、患者データ、血液製剤の管理、統計処理など、安全で適正な輸血療法が実施できるよう努めております。
輸血療法とは
患者さんご自身で十分な血液が作れなかったり、事故や大量出血により生命に危険が生じる場合、その成分を補うために行う治療方法です。このときに使用するものを「血液製剤」といいます。
血液製剤とは
献血で得た貴重な資源である血液を原料として、血液をそのまま使用したり 、各成分に分けて赤血球・血小板・血漿・アルブミン製剤などの成分製剤を作ります。これらを血液製剤といいます。
自己血輸血とは
他人の血液を輸血することは一種の臓器移植であり、感染症、発熱、発疹などの副作用のリスクを伴います。このリスクを避ける目的で自分の血液を貯血し、必要時に輸血する療法です。 輸血に伴う「リスク」を最小限にするため、自己血輸血を推奨しています。
輸血に
関する検査- ABO式・Rh式血液型
- HCV抗体検査
- HTLV-1抗体検査
- 交差適合試験
- その他、輸血に関する検査
- HBウィルス関連検査
- HlV抗体検査
- 梅毒血清学的検査
- 赤血球不規則抗体検査
管理業務 - 血液製剤の発注・納品
- 血液製剤の払い出し・搬送
- 血液製剤の保管管理
- 血液製剤の放射線照射
- 輸血に関する情報提供
- 輸血に関する備品や台帳の管理
- 適正な輸血の推進、教育啓蒙
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肉眼では見えない細菌を各種検査材料よりさまざまな検査法により見える形にして検出し、感染症の原因菌を治療に役立てるための検査を行なっています。
塗抹検査

検査材料をスライドガラスに塗り、特殊な色素で染め(染色)、顕微鏡で細菌の色(染色性)と形(形態)から病原菌を推定し迅速報告に役立てます。
培養検査

検査材料を細菌の発育に必要な栄養を含ませた寒天(培地)に塗り広げ、35℃で1日静置して目に見える集落(コロニー)を得る分離培養をします。そのコロニーを以下の各種検査に用います。
同定検査

培養した細菌をさまざまな検査法を用いて菌名を確定します。当院では質量分析装置(写真)により数分間で同定が可能です。
抗菌薬感受性試験

培養された菌に対する各種抗菌薬の有効性(抗菌薬感受性)を検査します。
PCR検査

病原菌の遺伝子(DNA)の数を増やし(増幅)、その存在を証明(検出)する検査法です。結核菌をはじめ重篤な感染症の早期診断に用いています。
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病理組織検査とは

病変部の組織を採取し、良性・悪性の診断を行います。
手術や内視鏡から採取された組織は、そのままの形態を保持するためにホルマリン溶液で固定します。これに特殊な処理をして、数μmに薄く切った組織をガラスに張り付け、目的に応じた染色を行い病理組織標本とします。病理医はこの標本を顕微鏡で観察して病理学的診断をします。 結果は、主治医に返され、今後の治療方針が決定されます。
私たち臨床検査技師は、良質な病理組織標本作製により、正確な病理診断に貢献しています。迅速組織検査とは
手術中などに切除した組織を迅速に病理組織標本にし、病理学的診断をします。その結果は手術方法や今後の治療方針に役立てられます。
細胞診検査とは

少量の細胞採取で、主にがん細胞の有無を調べる検査です。細胞診検査は検体採取が容易であり、患者さんの苦痛も少ないので反復検査がしやすい利点があります。
細胞をスライドガラスに採取し、染色後に細胞検査士(専門の資格を持つ検査技師)が顕微鏡で観察し、クラス分類(I~V)およびベセスダ分類または正常or良性、鑑別困難、悪性疑い、悪性で判定します。その後、細胞診専門医が標本を確認し診断します。穿刺吸引細胞診とは

腫瘍病変が疑われるところに細い針を刺してほんの少しの細胞を採取して顕微鏡で観察します。主に乳房・甲状腺・リンパ節・唾液腺に対して行っています。当院では診療の場に細胞検査士が出向き、ベッドサイドで診断に適正な採取量を確認し、臨床医とコミュニケーションを取りながら、検体不適正とならないように努めています。
婦人科液状細胞診について

当院での婦人科子宮腟部検査(細胞診)は、一般的な直接塗抹法に加えて標本の標準化と診断精度の向上を目的に早期にThinPrepシステム(液状細胞診)を導入しました。
このThinPrepシステムは、婦人科細胞診用に開発されたもので、採取用ブラシを用いて採取した細胞は全て保存液に回収され、専用機械にて検査標本を作製します。このため、常に一定の標本が作製され、精度の高い検査結果を提供することができます。さらに、この検体を利用して、HPV遺伝子検査をすることが可能です。顕微鏡では右の写真のように観察されます。(ThinPrep標本)病理解剖とは
病気で亡くなられた患者さんの遺体を解剖することによって、その死因・病因などを明らかにし、生前の臨床診断や治療が適切かどうかを検討して、医療の進歩に役立たせることを目的に行われます。当院では病理医と臨床医の間で定期的に解剖症例の検討会を行っています。
ISOに関する取組みについて
ISO認証施設として、以下に示す管理を実践しています。
1.毒劇物及び危険物の保管管理
2.毒劇物の使用管理
3.毒劇物の廃液管理
4.毒劇物の払い出し管理
5.PRTR法に定められた化学物質の廃液管理
6.リサイクル液の管理 -

生理検査は、 直接患者さんの生体に機器やセンサーを取り付けて、微弱な信号を記録したり、臓器の状態を観察したりする部門です。測定データを直ちに電子カルテで確認できるようなシステムを構築し、迅速で正確な結果報告を心がけております。
通常検査として以下の項目を実施しております。循環器系
12誘導心電図検査

心臓を動かす電気の流れを体の表面に付けた電極から検出し、波形として記録します。
トレッドミル検査

速度と傾斜が変化するベルトの上で運動して負荷をかけることにより、安静時では分かりにくい狭心症や不整脈などを見つける精密検査です。
検査は循環器科医が直接行います。ホルター心電図検査

携帯型の心電計を1日装着して、日常生活の中での心電図変化を記録します。
入浴・運動以外は、特に制限事項はありません。心エコー検査

胸の上から超音波を当てて、心臓の形や大きさを見る形態学的診断と、心臓の動きや弁の動きなどから心臓機能を評価する検査です。
超音波は人間の体には無害ですので、安全な検査です。24時間血圧測定検査(ABPM)

携帯型の自動血圧計を装着して、1日の血圧変化を1時間ごとに24時間記録します。
呼吸器系
肺機能検査・気道可逆試験

口だけで息を吸ったり吐いたりして、肺活量や気道の閉塞を調べる検査です。
気道可逆試験は、肺機能検査後に気管支拡張剤を吸入し、改善の程度を測定するためにもう一度肺機能検査を行います。肺特殊機能検査

肺活量と気道閉塞の検査に加えて、全て空気を吐き出した後の肺の中に残る空気の量(残気量)、肺に入った酸素が血液の中にどの程度溶け込むか(拡散能力)を調べます。
鼻腔通気度検査

鼻の通りを客観的に評価する検査です。
代謝系
血圧脈波検査(ABI)

両手両足の血圧を同時に測定することにより、閉塞性動脈硬化症における狭窄および閉塞状態を評価します。
深呼吸変動(CVR-R)

1分間深呼吸をしたときの心拍数の変動から、自律神経の状態を調べる検査です。
脳波検査

頭皮に電極を貼り付けて、大脳皮質表面の活動電位を増幅し波形として記録します。
簡易睡眠検査

睡眠時無呼吸症候群の判定を行う簡易検査です。
測定器を貸し出しますので自宅にて就寝時に、ご自分で装着して検査をします。終夜ポリグラフ(PSG)

睡眠時無呼吸症候群の判定を行う精密検査です。
一泊の入院検査で、睡眠中の脳波・眼球運動・顎の筋電図・呼吸フロー・気管音・胸の動き・お腹の動き・心電図・足の筋電図・血液の酸素濃度などを同時に測定します。神経系
神経伝導速度

調べる部位に電気刺激を与え、運動神経の興奮伝導速度を調べます。
聴性脳幹反応(ABR)

ヘッドホンで一定の音を聞き、そのときの誘発電位を記録することにより、客観的に耳の聞こえの評価をします。
視覚誘発電位(VEP)

モニター画面上の白黒格子パターンを凝視し、そのときの誘発電位を記録することにより、視覚伝導路と周辺組織の機能を調べます。
針筋電図検査

専門医が針を筋肉に刺して、個々の骨格筋の活動電位を調べます。
重心動揺検査

検査台の上に両足をそろえて立ち、平衡機能障害(ふらつき)を客観的に評価します。
術中針筋電図検査

脳外科、整形外科、循環器外科領域の手術において、神経損傷の防止のため、全身麻酔中の運動機能評価を行います。
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近年、遺伝子関連検査は技術革新が進み、コンパニオン診断や次世代シーケンサー(NGS)の普及など、市場は急速に拡大しています。情勢は国家プロジェクトやISO15189へ波及しており、今後も院内で遺伝子検査を実施するには、各種ガイドラインに準拠した検査体制を整える必要があります。このような環境下で、当院においては2019年に遺伝子検査室を整備致しました。厚労省認定の先進医療をはじめ、肝炎ウイルスのリアルタイムPCR検査やシーケンサを用いたSNP解析など、様々な遺伝子関連検査を実施しています。今後もより診断・治療に貢献する質の高い検査情報を提供してまいります。
スタッフ構成・資格
スタッフ構成
71名(2025年4月1日現在)
所属スタッフの有する主な資格
|
認定一般検査技師
|
2名 |
二級臨床検査士(血液学) |
7名 |
|---|---|---|---|
|
認定救急検査技師
|
7名 |
二級臨床検査士(循環生理学) |
3名 |
|
認定血液検査技師
|
3名 |
二級臨床検査士(神経生理学) |
2名 |
|
認定心電検査技師
|
3名 |
二級臨床検査士(微生物学) |
9名 |
|
認定病理検査技師 |
4名 |
二級臨床検査士(臨床化学) |
1名 |
|
認定輸血検査技師 |
2名 |
細胞検査士 |
8名 |
|
認定臨床微生物検査技師 |
4名 |
国際細胞検査士 |
3名 |
|
認定臨床化学・免疫化学精度保証管理検査技師 |
1名 |
緊急臨床検査士 |
6名 |
|
遺伝子分析化学認定士 |
1名 |
超音波検査士(循環器領域) |
8名 |
|
感染制御認定微生物検査技師 (ICMT) |
4名 |
超音波検査士(消化器領域) |
2名 |
|
ICLSインストラクター |
1名 |
超音波検査士(体表臓器領域) |
1名 |
|
JHRS認定心電図専門士 |
3名 |
超音波検査士(血管領域) |
2名 |
|
日本臨床神経生理学会専門技術師 |
1名 |
血管診療技師 |
1名 |
|
日本臨床神経生理学会認定技術師 |
1名 |
心電図検定1級 |
3名 |
|
JPTEC |
1名 |
心電図検定2級 |
2名 |
|
MCLSインストラクター |
1名 |
POCT測定認定士 |
1名 |
|
MCLSプロバイダー |
1名 |
糖尿病療養指導士 |
8名 |
|
日本DMAT隊員 |
1名 |
愛知県肝炎コーディネーター |
1名 |
|
医療経営士 3級 |
1名 |
RPSGT |
1名 |
|
PRプランナー補 |
1名 |
准看護師 |
1名 |
|
特定化学物質作業主任者 |
4名 |
医療情報技師 |
2名 |
|
有機溶剤作業主任者 |
4名 |
医療安全管理者 |
3名 |
|
毒劇物取扱者 |
1名 |
医科医療事務管理士 |
1名 |
|
衛生管理者 |
5名 |
介護事務管理士 |
1名 |
|
衛生工学衛生管理者 |
4名 |
調剤事務管理士 |
1名 |
|
第2種ME技術者 |
1名 |
防災士 |
1名 |
|
第一種衛生管理 |
2名 |
統計士 |
2名 |
|
臨地実習指導者 |
1名 |
ITパスポート |
8名 |
臨床検査技師のチーム医療への参画
褥瘡対策委員会
目的:院内の褥瘡(床ずれ)発生率の減少・早期治癒を目指し、褥瘡に関する教育や創傷管理の指導を行います。
役割:ラウンド時に褥瘡のある患者さんの検査データ(培養結果や炎症反応・アルブミン値など)を提供し、原因菌を調べるための培養検査の検体採取も行います。
栄養サポートチーム(NST)
目的:食べ物を口から摂り入れることが難しい患者さんの栄養状態を良好に保つため、多角的な視点で栄養指導を行います。
役割:栄養評価の指標となる検査データの提供や、他職種スタッフとのラウンドで患者さんの病態把握・データ推移などの助言を行います。
ICT(感染管理)ワーキンググループ
目的:病院内での感染予防・感染発生時の早急対応に努め、患者さんが安心して利用できる病院にするために活動します。
役割:感染対策を確認するための院内パトロール、スタッフへの教育、抗菌薬の検討会に参加します。
SMT(医療安全)ワーキンググループ
目的:医療事故などが起こらないよう、安全な医療サービスを提供するために活動します。
役割:医療現場を確認するための院内パトロール、スタッフへの教育、実際に起きた事例の分析や対応策を考案します。
抗菌薬適正使用チーム(AST)
目的:使用されている抗菌薬の種類・量・期間などが適切であるか確認し、感染症治療の支援を行います。
役割:血流感染症の迅速検査・報告、カンファレンスに参加し必要な微生物関連情報(菌名・薬剤感受性など)を提供します。
DMAT(災害派遣医療チーム)
目的:医師、看護師、業務調整員で構成される専門的な訓練を受けた医療チームで、災害現場に迅速に駆けつけます。
役割:業務調整員として、通信・移動・生活手段の確保や情報収集、他の医療機関との連携を図ります。
ISO15189認定取得
当科は、臨床検査室の国際基準ISO15189を2010年11月9日付けで認定取得しております。