下部消化管
診療責任者
- 小林 建司
-
- 副院長
- 外科統括部長
- 廣川 高久
-
- 消化器外科管理部長
患者の皆さまへの一言
大腸がん(結腸がん・直腸がん)を中心に、大腸憩室穿孔や急性虫垂炎などの急性腹症、内痔核、痔瘻などの肛門良性疾患、さらにはそけい部ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアに対する手術療法を行っています。
大腸がん手術の9割以上は腹腔鏡下手術が行われており、日本内視鏡外科学会の技術認定取得者を中心に質の高い治療を行っています。直腸がん患者さんのうち疾患の状態などからロボット支援手術の適応が認められた方は、保険診療でロボット支援直腸切除術を受けていただくことができます。
他院で手術が必要と判断された方でも、ご相談いただければいつでも対応いたします。
代表的な対応疾患
- 大腸がん
- 直腸がん
- 炎症性腸疾患
- 肛門疾患
診療内容
下部消化管外科では大腸がんに代表される悪性疾患をはじめ、炎症性腸疾患、肛門疾患(痔など)、さらには、大腸憩室穿孔や急性虫垂炎など急性腹症の診療を行っています。患者さんに優しい負担の少ない治療を心がけており、多くの症例を小さな傷で痛みの少ない腹腔鏡下手術で行っています。
- 大腸がん
大腸がんは大腸粘膜から発生する悪性腫瘍です。大腸がんは大きく結腸がんと直腸がんに分類されます。また、病変の大きさ、リンパ節への転移、他臓器への転移によってStage 0からStage IVに分類されます。大腸内視鏡で切除できなかった大腸がんは手術が必要になります。全ての治療方針は、患者・家族の皆さまと十分に相談し寄り添って決定しています。患者さんに最も適した治療が行えるよう常に心がけています。
患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版より 1.結腸がん
大腸がんの中でも盲腸からS状結腸にできたがんを結腸がんと呼びます。結腸がんに対する手術には結腸右半切除、S状結腸切除などがあります。大腸がんはリンパ節への転移を起こす可能性があるため、がんのある部分の腸に加え転移の可能性があるリンパ節も一緒に切除します。
患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版より 当院では、これらの手術を傷が小さく体に負担の少ない腹腔鏡下手術で9割以上の患者さんに行っています。患者さんに優しい手術を安全かつ高い質(根治性)で提供できるよう、日本内視鏡外科学会が定める大腸領域での技術認定医(内視鏡下手術を安全かつ適切に施行する技術を有し、かつ指導するに足る技量を有していることを認定するもの)2名を中心に手術を行っています。
2022年4月より、結腸がんに対するロボット支援手術が保険診療で行えるようになりました。以下の直腸がんに示したロボット手術支援手術のメリットは、結腸がんでも同様です。当院では、直腸がんでの豊富なロボット支援手術の経験から、結腸がんに対しても安全かつ質の高い手術を提供します。
2.直腸がん
直腸がんは骨盤の中の大腸にできた病気です。近年では直腸がんに対するロボット支援手術が保険診療で行えるようになりました。ロボットの特徴として解像度の高い3D画像、腹腔鏡にはなかった多関節機能などがあり、骨盤内の奥深く狭いところの直腸がんこそロボット支援手術が適しています。また、直腸がんでは合併症として神経障害によって生じる性機能障害や排尿障害が起きることがあります。これらを回避するためにもロボット支援手術が非常に有用です。
これらの利点から、当院では2021年4月から直腸がんの全例をロボット支援手術の対象としています。ダ・ヴィンチ Xiとダ・ヴィンチ Xの2台体制で、県内でも直腸領域で数名しか認定されていない内視鏡外科学会の定めるロボット支援手術のプロクター認定(ロボット支援下内視鏡手術の手術手技において 術者として標準的な技量を取得し、他者によるロボット支援手術を円滑かつ安全に指導 できる指導者を認定するもの)を受けた医師2名が在籍し、質の高い直腸がんのロボット支援手術を提供しています。直腸がんが肛門付近に発生することもあります。そのような場合は肛門ごと切除して、人工肛門を作る必要が出てきます。おおよそ肛門から指で届く程度の部分にできた進行がんには直腸切断術が必要となってきます。近年、肛門近くの病変でも肛門を極力温存するようになってきました。その手術方法として括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection:ISR)があります。肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋の二つがあり、外肛門括約筋を残すことで肛門機能を保つ方法です。肛門機能の低下はありますが、日常生活は可能な状態に戻ることがほとんどです。当院ではこのような肛門温存手術もロボット支援手術で行なっております。先ほど述べたとおり、ロボット支援手術は狭い骨盤の中でより安定した手術が可能であるため、肛門温存手術においても非常に有用です。ロボット支援手術は腹腔鏡手術より肛門温存率が明らかに高いというデータもあります。私たちもロボット手術の有用性を実感しています。当院では適応を的確に判断し、極力肛門を温存するように行っております。
患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版より
手術件数推移3.高度に進行した大腸がんや再発された方への拡大手術
大腸がんは高度に進行すると他臓器に浸潤したり、遠くの臓器やリンパ節に転移します。特に直腸がんでは狭い骨盤の中に膀胱や子宮など多くの臓器があり、それらの臓器へ浸潤を起こしやすい状況にあります。また、お腹の中に再発した場合、多くは他の臓器に食いつくように再発します。他臓器に転移や再発がある場合も、大腸がんは手術で切除すれば根治できる可能性があります。逆に切除しなければ治りません。当院では”がんを克服”をモットーに他臓器合併切除などの拡大手術を積極的に行っています。また、抗がん剤や放射線治療を組み合わせることでさらに再発を抑えるよう集学的治療に取り組んでいます。他病院で切除ができないと診断された方でも、当院で切除できるかもしれません。もし、そのような診断を受けた方がいらっしゃいましたら一度ご相談ください。
- 炎症性腸疾患
- 内科的治療に抵抗性のある潰瘍性大腸炎に対して外科的治療を行っています。腹腔鏡下手術を施行して小さな切開創で大腸全摘出術、回腸―肛門吻合または回腸―肛門管を行っています。
- 結腸憩室症
- 近年、食生活の変化や環境要因などで特に左側結腸(S状結腸など)の憩室(けいしつ)症が増えています。膀胱と交通したり穿孔を起こしたり、狭窄(きょうさく)で排便時に痛みが生じる場合は積極的な手術適応があり、対応しています。
- 肛門疾患
- 主として内痔核(いぼ痔)、痔瘻、直腸脱に外科的治療を行っています。痔核については、保存的治療(薬物療法)、輪ゴムによる結紮法、注射(ALTA)での治療、手術療法などさまざまな治療法などを行っています。 治療方針については肛門疾患診療ガイドラインに基づき標準的な治療を提供しております。また、直腸脱についてはカウンセリングの後、経肛門的手術や腹腔鏡下直腸固定術など導入しております。
大腸・肛門専門の外来を開設していますのでご相談ください。 - その他一般外科
- 消化器外科では、急性虫垂炎に対しては全例腹腔鏡下手術で対応しています。
診療方針
各疾患に対してガイドラインに沿った医療を基本方針としております。先進的な医療・技術を常に取り入れながら、十分なご説明の上に同意をいただきながら診療を行っています。
診療実績
疾患別の治療・手術・検査実績(件)
2019年 | 2020年 | 2021年 | ||
---|---|---|---|---|
大腸がん | 結腸がん(合計) | 105 | 118 | 103 |
腹腔鏡下結腸手術 | 94 | 96 | 91 | |
直腸がん(合計) | 60 | 49 | 64 | |
腹腔鏡下直腸手術 | 36 | 23 | 10 | |
ダヴィンチ直腸手術 | 17 | 22 | 49 |
医師紹介
氏名 | 役職 | 出身大学 | 医師免許取得年 | 主な専門領域 | 指導医・専門医・認定医など |
---|---|---|---|---|---|
小林 建司 | 副院長 外科統括部長 |
名古屋市立大学 | 1986年 | 消化器外科、 下部消化管外科 |
|
田中 守嗣 | 病院長 | 名古屋市立大学 | 1981年 | 消化器外科、 肝胆膵外科 |
|
山本 稔 | 消化器外科部長 | 名古屋市立大学 | 1993年 | 消化器外科、 肝胆膵外科 |
|
宮井 博隆 | 上部消化管外科部長 | 名古屋市立大学 | 2000年 | 消化器外科、 上部消化管外科 |
|
廣川 高久 | 消化器外科管理部長 | 山梨医科大学 | 2003年 | 消化器外科、 下部消化管外科 |
|
鈴木 俊裕 | 疼痛緩和ケア科医長 | 名古屋大学 | 2004年 | ||
上野 修平 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2010年 | 消化器外科 |
|
江口 祐輝 | 消化器外科医員 | 金沢医科大学 | 2014年 | 消化器外科 |
|
澤井 美里 | 消化器外科医員 | 藤田医科大学 | 2017年 | 消化器外科 | |
加藤 潤紀 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2017年 | 消化器外科 | |
齊藤 健志 | 消化器外科医員 | 愛媛大学 | 2019年 | 消化器外科 | |
柴田 晃輔 | 消化器外科医員 | 浜松医科大学 | 2020年 | 消化器外科 |