呼吸器外科
診療責任者
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雪上 晴弘
部長
患者の皆さまへの一言
呼吸器疾患の外科治療を担当しています。原発性肺がんが中心ですが、縦隔腫瘍、気胸、感染症など疾患は多岐にわたります。病気を治すことが目標ですが、同時により安全で、より負担の軽い手術が求められており、これらのバランスが取れた手術を行うことが最も重要と考えています。
病状や治療内容をできる限り分かりやすく患者さん、ご家族に説明し、納得して治療を受けていただけるよう努めています。疑問点などがあれば遠慮なくお尋ねください。
代表的な対応疾患
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悪性疾患 …肺がん(原発性、転移性)・縦隔腫瘍(胸腺腫、胸腺がん、胚細胞性腫瘍)・胸壁腫瘍(転移性など)
びまん性悪性胸膜中皮腫 -
嚢胞性疾患 …自然気胸・巨大肺のう胞症
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炎症性疾患 …膿胸・結核・非結核性抗酸菌症・肺真菌症
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良性疾患 …縦隔腫瘍(神経原性腫瘍、のう胞性腫瘍)・胸壁腫瘍(神経原性腫瘍など)・肺過誤腫など
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その他の疾患 …重症筋無力症・肺分画症・気道狭窄・気道異物・胸部外傷など
診療内容
肺がん
肺がんを疑う症例には呼吸器内科や放射線科と連携して確定診断を試み、同時にステージング(がんの進行度合い、病期を決めること)を行います。手術適応であれば耐術能(手術、麻酔に体が耐えられるか)を評価し、術式を決定します。病期によっては術前治療(抗がん剤治療、免疫治療、放射線治療)を行う場合があります。術式は肺葉切除術+リンパ節郭清が基本ですが、より早期の病変の場合は切除範囲を縮小する肺区域切除術を行います。手術は体への負担が軽い胸腔鏡下手術、ロボット支援胸腔鏡下手術を中心に行いますが、病状や患者さんの併存疾患などにより開胸手術を行う場合もあります。術後は病理診断結果をふまえて経過観察や術後補助化学療法を行います。
胸腔鏡下手術について
2008年から肺がんに対する胸腔鏡下手術を行っています。1cm・1.5cm・2.5~3.5cmの3カ所の皮膚切開を置き、モニター視のみで行います。
完全胸腔鏡下手術の最大の利点は術後の痛みが軽く回復が早いことで、術後3~6日程度で退院となります。
これまで1000例以上の経験を重ね、ノウハウの蓄積、手技の定型化、手術器具やテレビモニタ-画質の進化などにより安全で精度の高い手術を実現しています。
胸腔鏡下手術についての詳細はこちら
胸腔鏡手術の皮膚切開
ロボット支援胸腔鏡下手術の皮膚切開
○ さらに2018年からは手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入したロボット支援胸腔鏡下手術を開始しています。
今後適応疾患がさらに拡大され、肺がん以外の呼吸器外科疾患に対しても施行できるようになります。
ロボット支援手術では図のように創の数が5カ所(1.2~1.5cmが4カ所、3.5cm程度が1カ所)になりますが、術後の痛みや回復、入院期間は従来の胸腔鏡下手術と同等です。ロボット支援胸腔鏡下手術には従来手術にはないメリットもあり、今後も積極的に進めていきます。詳細はこちら
自然気胸
20歳前後の男性に発症するのう胞性疾患で、のう胞が破れて肺が虚脱します。突然の胸痛や呼吸苦で発症することが多いです。手術適応は再発した自然気胸、初発でも明らかなのう胞を有し再発する可能性が高いもの、空気漏れが止まらない場合などです。1~1.5cm程度の3カ所の傷で胸腔鏡下手術を行います。手術はのう胞を含めた肺部分切除+ポリグリコール酸(PGA)シートによる被覆が基本術式ですが、病変の状態によりソフト凝固による焼灼なども組み合わせます。入院期間は術後2日程度です。
縦隔腫瘍
縦隔腫瘍は良性と悪性があります。良性で多い疾患には神経原性腫瘍、のう胞性腫瘍(胸腺のう腫、心膜のう胞など)があり自然気胸と同様に胸腔鏡下手術を行います。
悪性で高頻度の疾患には胸腺腫があります。小さいものでは胸腔鏡下に摘出しますが、大きいものは胸骨正中切開による摘出術となります。縦隔腫瘍もロボット支援胸腔鏡下手術の適応となっており、診断や病変の位置、大きさなどにより胸腔鏡下手術、ロボット支援手術、胸骨正中切開手術を選択し、安全に完全切除を目指します。
診療方針
エビデンス(科学的根拠)や診療ガイドラインに基づいた最新の治療を行うことを基本とし、患者さん・ご家族に、病状、手術・治療の目的、治療方法、治療に伴う危険性をしっかりとインフォームドコンセント(十分な説明と同意)することを心がけています。また、エビデンスの乏しい疾患・病態や術後合併症など予期しない経過の場合こそインフォームドコンセントがより重要になってくると考えています。よりよい手術の提供はもちろん、患者さん・ご家族の病気や治療に対する不安の軽減なども含めて安心して治療を受けていただけるよう努めてまいります。
診療実績
疾患別の治療・手術・検査実績(件)
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2022年度
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2023年度
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2024年度
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|---|---|---|---|
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原発性肺がん
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101 |
96 |
100 |
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転移性肺がん
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20 |
19 |
34 |
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悪性胸腺腫
|
9 |
3 |
12 |
|
胸壁腫瘍(悪性)
|
0 |
1 |
1 |
|
びまん性悪性胸膜中皮腫 |
0 |
0 |
2 |
|
自然気胸 |
53 |
57 |
45 |
|
膿胸 |
4 |
5 |
4 |
|
結核、非結核性抗酸菌症 |
2 |
3 |
0 |
|
肺真菌症 |
3 |
1 |
0 |
|
良性縦隔腫瘍 |
10 |
5 |
4 |
|
良性胸壁腫瘍 |
2 |
3 |
1 |
|
肺良性腫瘍 |
4 |
5 |
5
|
|
重症筋無力症 |
0 |
1 |
1 |
|
縦隔鏡 |
0 |
1 |
0 |
|
硬性鏡 |
1 |
5 |
3 |
|
その他の手術 |
12 |
23 |
14 |
医師紹介
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氏名
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役職
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出身大学
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医師免許取得年
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主な専門領域
|
指導医・専門医・認定医など
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|---|---|---|---|---|---|
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雪上 晴弘 |
呼吸器外科部長 |
名古屋市立大学 |
1995年 |
呼吸器外科全般 |
・日本外科学会
指導医、外科専門医 ・呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医 ・日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医、気管支鏡専門医 ・日本結核病学会 結核・抗酸菌症認定医 ・肺がんCT検診 認定医 ・日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 ・臨床研修指導医 |
|
平野 絢子 |
呼吸器外科医員 |
名古屋市立大学 |
2019年 |
呼吸器外科全般 |
・日本専門医機構
外科専門医 |
|
柴田 晃輔 |
呼吸器外科医員 |
浜松医科大学 |
2020年 |
呼吸器外科全般 |
|
|
山田 健 |
呼吸器外科顧問 |
名古屋市立大学 |
1984年 |
呼吸器外科全般、胸腔鏡下手術、 |
・日本外科学会
指導医、外科専門医 ・日本呼吸器外科学会 指導医、呼吸器外科専門医 ・日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医、気管支鏡専門医 ・日本胸部外科学会 認定医 ・日本消化器外科学会 認定医 ・臨床研修指導医 |