泌尿器科
診療責任者
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近藤 厚哉
泌尿器科部長
患者の皆さまへの一言
当科は泌尿器科領域の幅広い範囲の診断と治療を行っており、新しい技術も積極的に導入しております。また男女を問わず、小児や若い方からご高齢の方までスタッフが優しく対応させていただいています。泌尿器科疾患でお悩みのある方はご相談ください。
代表的な対応疾患
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尿路結石
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前立腺肥大症
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過活動膀胱、切迫性尿失禁
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悪性腫瘍(前立腺がん・腎がん・膀胱がん・腎盂尿管がん・精巣がん)
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副腎腫瘍
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骨盤臓器脱(膀胱脱、子宮脱、子宮摘除後膣脱)
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腹圧性尿失禁
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間質性膀胱炎・膀胱痛症候群
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尿路感染症
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小児泌尿器疾患
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泌尿器外傷
診療内容
泌尿器科疾患全般を幅広く診療しております。
尿路結石
小さな結石は自排石可能なため、内服薬治療など内科的治療を行います。自排石できない結石に対しては、外科的治療法として体外衝撃波治療や内視鏡手術を行います。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は体に傷をつけずに結石を砕くことができます。
ESWLで破砕困難な場合、内視鏡手術として経皮的腎砕石術(PNLあるいはECIRS)や経尿道的尿管砕石術(TUL)を施行します。その際はホルミウムレーザー装置や空圧式結石破砕装置を用いて結石を破砕します。 細径軟性尿管鏡による経尿道的腎砕石術(f.TUL)も行っています。
前立腺肥大症
まず内服薬治療を行い、治療効果が得られない場合には、お腹を切らずに尿道から内視鏡を挿入して前立腺を内側から切除する手術(TURP:経尿道的前立腺切除術)やホルミウムレーザーによる前立腺核出術(HoLEP)を行います。
HoLEPは低侵襲治療であり、入院期間が5~6日程度と短くなります。 大きな前立腺肥大症にはHoLEPを行い、小さめの前立腺肥大症にはTURPを行います。当院ではHoLEPを行う症例が多くなっています。初診時には必ず腫瘍マーカーを採血して、前立腺がんのチェックを行います。
2023年3月からは、より手術侵襲の小さい経尿道的前立腺吊り上げ術(urolift)も行っています。
過活動膀胱(OAB)、切迫性尿失禁(UUI)
過活動膀胱とは尿意切迫感(急に強くなり、我慢することが困難なほどの強い尿意)が必須の症状で、通常は頻尿や夜間頻尿を伴っており、場合によっては切迫性尿失禁(急に強い尿意が起こってトイレまで間に合わず尿が漏れる)を伴うことがある病気です。
膀胱炎や膀胱がんなどの病気を除外した上で、自覚症状から診断します。治療はまず、β刺激薬や抗コリン薬を用いた薬物治療から行います。通常の薬物治療で効果が得られない場合は、尿道から内視鏡を挿入して膀胱壁にボトックスを注入する処置(ボトックス膀胱壁内注入療法)を検討します。
悪性腫瘍
1.前立腺がん
前立腺検診(PSA採血)の普及により、患者さんが急増しています。75歳以下、早期の前立腺がんの場合は、前立腺全摘除術をおすすめしています。2013年4月よりロボット支援前立腺全摘除術を開始しました。この手術では膀胱尿道吻合を確実に行うことができバルンカテーテルの留置期間が短くなることで、入院期間も短縮できます。また前立腺がんの状態によっては、勃起神経の温存も従来よりも確実に行うことができ、出血も少なくすみます。ロボット支援前立腺全摘除術は傷が小さく早期の社会復帰が可能な有用な手術といえます。
他にも年齢や病期に合わせて、ホルモン療法や放射線治療(強度変調放射線治療:IMRT)なども選択することができます。一方、進行がんの場合には、ホルモン療法、新規ホルモン療法、分子標的薬、抗がん剤、骨病変治療薬、緩和照射などを用いて集学的に治療を行います。
2.腎がん
検診のエコーで偶然発見されることが多くなってきました。早期に見つかったがんであれば標準的には手術で取り除きます。当科には泌尿器腹腔鏡手術の技術認定医が複数在籍しています。がんが4cm以上の場合は、傷の小さい腹腔鏡下手術・ロボット支援手術あるいは開腹手術で腎臓を摘除します。がんが4cm以下の場合は、腎部分切除術を行っています。2016年7月からはロボット支援腎部分切除術を導入しました。
腎がんは①腹腔鏡下腎摘除術・ロボット支援腎摘除術 ②開腹の腎摘除術 ③ロボット支援腎部分切除術 などの手術法があり、腫瘍の状態により患者さんと相談しながら治療方法を選択します。
一方、進行がんには分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)などによる内科的治療を行います。
3.膀胱がん
表在性腫瘍であれば内視鏡手術で治ります。表在性腫瘍の再発予防には抗がん剤やBCGの膀胱内注入療法を行っています。根の深い浸潤性腫瘍であれば標準的には術前化学療法と膀胱全摘除術を行い尿路変更として回腸導管(ストマ)を作成します。 症例によっては、膀胱を摘出した後の尿路変更として小腸で代用膀胱を作成して尿道から尿が出るようにする手術を行います。2018年10月からはロボット支援膀胱全摘術を導入しました。ロボット支援膀胱全摘術は傷が小さいことや出血量が少ないことから従来の開腹手術に比べて侵襲が少ない有用な手術といえます。手術をせずに膀胱動脈への抗がん剤の注入と放射線治療(強度変調放射線治療:IMRT)を組み合わせて膀胱温存をはかる場合もあります。
4.腎盂尿管がん
後腹膜アプローチによる腹腔鏡下手術で腎臓を遊離し、下腹部小切開により尿管下端まで剥離し、下腹部の切開創から腎尿管を摘除しています。従来の開腹手術より格段に傷が小さく術後の痛みが軽くすみます。
2022年12月からロボット支援腎尿管全摘除術を導入しています。
5.精巣がん
抗がん剤の有効な腫瘍であり、転移のある腫瘍でも集学的治療により治る確率が高くなってきています。
骨盤臓器脱
手術療法として、ロボット支援仙骨膣固定術(RASC)、腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC手術)、膣閉鎖術などを行っています。膀胱脱、子宮脱、子宮摘除後膣脱などの骨盤臓器脱に対し良好な治療成績を得ています。
○2018年4月、女性泌尿器科外来【予約制】を開設しました
超高齢社会を迎え、尿もれや頻尿などの泌尿器疾患に悩む女性が増えています。対象疾患は、骨盤臓器脱(膀胱脱、子宮脱、子宮摘除後膣脱)、腹圧性尿失禁、過活動膀胱・切迫性尿失禁、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群などです。一人で悩まず、悪化する前に専門医の受診をおすすめします。
泌尿器科の受診には抵抗がある方が多く、女性の場合は男性以上にプライバシーに配慮した診療が必要となります。従来は男女混合で診察室を使用していましたが、女性泌尿器科外来では女性専用の診察室にてより細やかな診療とリラックスして受診できる環境の提供を目指します。
腹圧性尿失禁
パッドテスト(尿失禁定量テスト)、ストレステスト、尿流測定などで評価します。手術療法としては、ポリプロピレン素材でできたメッシュ状のテープを尿道の裏側に通して尿道の支持構造を再建する手術(TVT手術)を行っています。認定看護師による尿失禁ケア外来での骨盤底筋体操の指導、干渉低周波治療(ウロマスター・ペネリスタ)などの保存的治療も行っています。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は、膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱痛、膀胱不快感などの症状を呈する疾患です。原因は不明で、膀胱粘膜の機能障害や免疫学的機序が想定されています。
対症療法としては、生活指導が大切で、ストレスの緩和、食事指導(酸性飲料、香辛料、柑橘類などの摂取を避ける)などをお勧めします。内視鏡的治療としては、膀胱水圧拡張術を行い、ハンナ病変を認める場合は病変部を電気焼灼します。膀胱内への薬物注入治療としてジムソ(DMSO)膀注療法が2021年4月に保険適用となりました。
当院におけるロボット支援手術(保険診療)
泌尿器科で実施している保険診療でのロボット支援手術は以下のとおりです。
前立腺がん 、腎がん 、 膀胱がん 、腎盂尿管がん、骨盤臓器脱(膀胱脱、子宮脱、子宮摘除後膣脱)、腎盂尿管移行部狭窄症
ロボット支援腎がん手術(保険診療)
・ロボット支援腎部分切除術・RAPNとは?
腎がんに対して、2016年4月から保険診療として認可されたロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を実施しています。腎がんは、以前は片方の腎臓を全て摘除する腎摘除術が行われていましたが、現在は約4㎝以下(小径腎がん)の単発腫瘍であれば部分切除が行われるようになっています。
小径腎がんの治療成績は【5年生存率:95%以上】といわれます。腎臓を全て摘出した場合には腎臓の全体の働きが落ちたり、将来の心臓病発症の割合が増えたりすることから、部分的に病巣のみを除去することで全摘除と変わらない治療成績であるといわれています。
※対象、実績、効果、入院期間、費用などの詳細は特集ページへ
・ロボット支援腎摘除術・RARNとは?
腎がんに対して、2022年4月から保険診療として認可されたロボット支援腹腔鏡下腎摘除術・RARNを実施しています。
腫瘍の大きさや位置が腎部分切除術の適応とならない症例や、腎周囲脂肪浸潤や腎静脈浸潤を伴う進行した症例が適応です。
ロボット支援腎尿管全摘除術(保険診療)
・ロボット支援腎尿管全摘除術・RANUとは?
腎盂尿管がんに対して、2022年4月から保険診療として認可されたロボット支援腎尿管全摘除術を実施しています。腎盂尿管がんは手術によって摘出することが最も有効な治療法であり、標準術式は腎盂尿管摘除術です。腎盂尿管がんは多発・再発しやすいために、病側の腎臓から尿管下端までを摘出する必要があります。
ロボット支援仙骨膣固定術(保険診療)
・ロボット支援仙骨膣固定術・RASCとは?
骨盤臓器脱(膀胱脱、子宮脱、子宮摘除後膣脱)に対して、2020年から保険診療として認可されたロボット支援仙骨膣固定術(RASC)を実施しています。骨盤臓器脱は出産、ホルモン環境の変化、加齢、重いものを持つ仕事、慢性の便秘、肥満などが原因となり骨盤底の臓器を支える力が弱くなるために、臓器が膣口から出てくる疾患です。ロボット支援仙骨膣固定術(RASC)では従来から行ってきた腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)とほぼ同様の処置を行います。仙骨膣固定術は骨盤の深部で剥離縫合を行う手術です。ロボット支援手術により手振れのない精緻な縫合処置を行うことができます。
ロボット支援腎盂形成術(保険診療)
・ロボット支援腎盂形成術・RAPPとは?
腎盂尿管移行部狭窄症に対して、2020年4月から保険診療として認可されたロボット支援腎盂形成術を実施しています。腎盂尿管移行部狭窄症は腎盂と尿管のつなぎ目が狭くなり、腎臓で作られた尿が通りにくくなる病気です。側腹部の疼痛や腎盂腎炎の原因となることがあります。手術では狭くなった部分を切除して、再度口径を大きくして吻合します。
診療方針
患者さんとともに検討し、ご理解いただいた上で治療を進めていきます。また、患者さんのQOL(生活の質)を向上させられるよう最善の治療の選択を心がけ、最新の治療を取り入れるよう努めております。
診療実績
外来・入院患者数(人)
|
|
2022年度
|
2023年度
|
2024年度
|
|---|---|---|---|
|
外来患者数 |
28,228 |
27,811 |
27,513 |
|
入院患者数 |
11,308 |
11,491 |
11,013 |
疾患別の治療・手術・検査実績(件)
|
|
|
2022年度
|
2023年度
|
2024年度
|
|---|---|---|---|---|
|
腎尿路結石
|
ESWL |
103 |
121 |
108 |
|
前立腺肥大症
|
HoLEP |
16 |
30 |
10 |
|
前立腺がん
|
前立腺生検 |
163 |
217 |
195 |
|
膀胱腫瘍
|
TUR-BT |
121 |
155 |
167 |
|
腎摘除術 |
腹腔鏡下手術 |
11 |
17(ロボット手術3) |
17(ロボット手術3) |
|
腎部分切除術 |
腹腔鏡下手術 |
0 |
0 |
0 |
|
腎盂形成術 |
腹腔鏡下手術 |
3(ロボット手術) |
3(ロボット手術) |
1(ロボット手術) |
|
副腎腫瘍 |
腹腔鏡下手術 |
10 |
12 |
10 |
|
骨盤臓器脱 |
LSC |
38(ロボット手術14) |
22(ロボット手術20) |
20(ロボット手術) |
|
腹圧性尿失禁 |
TVT |
5 |
10 |
8 |
|
腹腔鏡手術 |
|
45 |
35 |
33 |
|
ロボット手術 |
|
107 |
116 |
125 |
医師紹介
|
氏名
|
役職
|
出身大学
|
医師免許取得年
|
主な専門領域
|
指導医・専門医・認定医など
|
|---|---|---|---|---|---|
|
近藤 厚哉 |
泌尿器科部長 |
岐阜大学 |
1994年 |
泌尿器科全般、骨盤臓器脱、腹腔鏡手術、ロボット手術 |
・日本泌尿器科学会 |
|
成田 知弥 |
泌尿器科医長 |
埼玉医科大学 |
2010年 |
泌尿器科全般、腹腔鏡手術 |
・日本泌尿器科学会 |
|
弓場 拓真 |
泌尿器科医員 |
大分大学 |
2015年 |
泌尿器科全般 |
・日本泌尿器科学会 |
|
社本 憲俊 |
泌尿器科医員 |
山梨大学 |
2020年 |
泌尿器科全般 |
|
|
鴛渕 仁俊 |
泌尿器科医員 |
久留米大学 |
2021年 |
泌尿器科全般 |
|
|
古澤 歩実 |
泌尿器科医員 |
愛知医科大学 |
2022年 |
泌尿器科全般 |
|
|
小川 雄大 |
泌尿器科医員 |
信州大学 |
2023年 |
泌尿器科全般 |
|
|
田中 國晃 |
顧問 |
名古屋大学 |
1982年 |
泌尿器科全般、腹腔鏡手術、ロボット手術 |
・日本泌尿器科学会
指導医、泌尿器科専門医 ・日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術 認定医 ・日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会 ロボット支援手術プロクター(指導医) ・日本医師会認定産業医 ・臨床研修指導医 |
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